第8歩 身体空間をマネジメントする

第8歩 身体空間をマネジメントする

 

ZERO BRAIN Systemは常にチームで動いている。

では、このチームをマネジメントしているのは誰なのでしょう。

そして、必要な瞬間に身体を反射させる。

これまで別々に見えていたものが、少しずつ一つにつながってきました。

このチームをマネジメントしているのが前庭器官です。

前庭器官という言葉を、初めて聞いた人もいると思います。
前庭器官は耳の奥にあります。

一般的には、身体のバランスを保つための器官として紹介されています。
三つの半規管は頭部の回転を感じる。
耳石器は、重力・直線的な動き・遠心力を感じる。

学校の教科書にも、そのように書かれています。

実は、これだけではありません。

これまで歩いてきた道を、もう一度振り返ってみましょう。

わたしたちは地球上で生活しています。
身体は常に重力を受けています。
重力があるから水平が生まれます。
水平があるから、空間を認識することができます。
空間を認識することができるから、身体は反射することができます。

これらは、それぞれが勝手に働いているわけではありません。
常にチームで動いています。

前庭器官は、自分で手・足を動かすことはできません。
筋肉のように、大きな力を出すこともできません。
主力選手ではありません。
サポート選手でもありません。

言い換えるなら、チームマネージャーです。

選手がFieldに立つ。
相手が動く。
ボールが動く。
周囲の状況が変化する。
そのたびに身体には、新しい空間が生まれます。

チームマネージャーは、その変化を捉え続けます。

今、身体はどこにあるのか。
頭部はどちらを向いているのか。
重力はどちらに働いているのか。
水平は保たれているのか。
どこを見ているのか。
どこから音が聴こえているのか。
身体は次にどちらへ動こうとしているのか。

その状況に応じて、必要な選手たちが働きます。

これが身体空間です。

身体空間は、身体の周囲にある単なるスペースではありません。
自分と周囲との関係によって、常に変化しています。

 

身体が置かれている状況によって、身体空間は変わり続けます。
その変化に合わせて、身体も変わらなければなりません。

ところが、視覚だけに頼っているとどうなるでしょう。

ボールを見れば顔が動く。
相手を見れば頭部が動く。
足元を見れば身体が固まる。
視覚に身体が振り回されてしまいます。

第7歩(章)では、一度視覚を外してみました。
音を聞くのではなく空間で聴く。
頭部を最適化する。
空間基準平面で音を聴く。

そこへ、もう一度視覚を戻しました。
すると、視覚の役割が変わりました。

視覚に身体を動かされるのではありません。
身体空間に視覚が入ってきます。

視覚に支配される選手から、視覚を使える選手に変わる瞬間です。

同じことは、筋肉にもいえます。

筋肉を動かそうとする。
関節を動かそうとする。
身体を思い通りに動かそうとする。
しかし、身体は一つの筋肉だけで動いているわけではありません。

主力選手がいる。
サポート選手がいる。
重力がある。
水平がある。
空間がある。
反射がある。
視覚がある。
聴覚がある。
そして、それらをマネジメントするチームマネージャーがいます。

一人の選手だけを動かそうとすれば、チームは機能しません。
大切なのは、選手を動かすことではありません。

選手が動ける身体空間をつくることです。

ZERO BRAIN Systemは、身体を思い通りに動かすための方法ではありません。
身体が自ら動ける環境をつくるための考え方です。

脳で考えてから身体を動かす。
筋肉に命令して身体を動かす。
一つひとつの動きを意識して身体を動かす。
それでは間に合わない世界があります。

スポーツのFieldです。

相手は待ってくれません。
ボールも待ってくれません。
重力も待ってくれません。
身体は、考えるよりも先に動かなければなりません。

そのために必要なのが基準です。

 

基準があるから、身体は迷わず動くことができます。
そして、その基準を使いながら、身体空間をマネジメントしているのが前庭器官です。

前庭器官は、身体を動かしているのではありません。
身体が動ける空間をつくっています。

わたしたちは、身体を動かしていると思いこんでいます。
しかし、本当にそうでしょうか。

もしかすると身体は、わたしたちが考えているよりもずっと前から、動く準備をしているのかもしれません。

重力を感じる。
水平を保つ。
空間を認識する。
視覚で見る。
聴覚で聴く。
そして反射する。
すべてが一つのチームとして働いたとき、身体は考えるよりも先に動き始めます。

これがZERO BRAIN Systemです。

身体を動かすのではなく、身体が動ける空間をつくる。
身体空間。

その中心にいるのが、前庭器官です。