第7歩 空間で聴く

第7歩 空間で聴く

 

目を閉じてみてください。
これから右足を動かします。
目を閉じたまま、しっかり右足の方を見てください。
はい!そのまま右足を動かしてみて。

どうでしょう。

右足は思うように動きましたか?

もう一度やってみましょう。
今度は目を閉じたまま、顔を正面に向けてください。
そのまま右足を動かしてみましょう。

先ほどより右足が動かしやすくなった方はいますか?

ところが、同じ右足です。

筋力も変わっていません。
目も閉じたままです。
変わったのは顔の向き。

わたしたちは目を閉じていても、「右足を見てください」と言われると、右足の方へ顔を向けます。

見えていないのに見ようとする

顔が動けば頭部も動く。
頭部が動けば、身体を動かすための基準も動きます。
手も足も出ない原因は、手にも足にもありません。
身体を動かすための基準が動いていた。

では、視覚を使わないスポーツではどうでしょう。

ブラインドサッカーという競技があります。
選手はアイマスクを装着し、ボールの中に入っている鈴の音や選手の声などを頼りにプレーします。

以前、日本代表クラスの元プロサッカー選手が、ブラインドサッカーを体験している姿を見ました。
当然ですが、サッカーの技術は超一流です。
ところが視覚を奪われた瞬間、思うように身体を動かすことができない。

ボールが動く。
鈴の音がする。
すると、その選手の顔も音のする方向へ向く。
ボールの音を顔で追っている。
右へ音が動けば顔も右へ、左へ動けば顔も左へ。
足元で音がすれば顔を下へ。

サッカーの技術がなくなったわけではない。
筋力がなくなったわけでもない。
反射神経が突然低下したわけでもない。
視覚を奪われたことで、身体を動かすための基準が変わってしまった。

わたしたちは普段、音を聞いています。
音がすれば、その方向へ顔を向けます。
これは日常生活ではごく自然な反応です。

しかし、スポーツではどうでしょう。
動いているボールの音を、そのたびに顔で追いかけていたら、頭部はボールに振り回されている。
頭部が動けば、身体を動かすための基準も動き続けます。
これでは、手も足も出せません。

では、ブラインドサッカーの選手は、どのようにボールを捉えているのでしょう。

ここで「聞く」と「聴く」を分けて考えてみます。

聞くとは、音そのものを捉えることです。
これを「基準聴力」といいます。

これに対して聴くとは、音を空間の中で捉えることです。
これを「空間聴力」といいます。

一つの音を追いかけるのではありません。

空間の中を流れている音を聴きます。

聞くと聴く。
同じ耳を使っています。
しかし、身体の使い方は大きく変わります。

音を聞こうとすると、顔が音の方向へ向く。
音を空間で聴くことができれば、音の流れを捉えることができる。

ここで、これまで紹介してきた二つの基準が登場します。
身体基準平面と空間基準平面です。

身体基準平面では、頭部は身体の動きに影響を受けます。
空間基準平面では、頭部を空間に対して安定させながら身体を動かします。

視覚を奪われ、ボールの音を顔で追ってしまえば身体は固まる。
しかし、音を空間で聴くことができるようになると、身体で追うことができる。

視覚を奪うことが目的ではありません。
視覚を一度外すことで、普段どれだけ視覚に頼って身体を動かしているのかに気づくことができます。

そして、視覚を使わずに音を空間で聴く。
頭部を最適化する。
空間基準平面で音を聴く。

その状態で、もう一度視覚を戻してみましょう。
すると、視覚の役割が変わって感じられませんか?
視覚に身体を動かされるのではなく、身体空間に視覚が入ってくる。
視覚に支配される選手から、視覚を使える選手に変わる瞬間。

目で見ています。
耳で聞いています。
身体を動かしています。
それぞれ別の働きのように感じます。

しかし、これらは本当に別々に働いているのでしょうか?

頭部を安定させることで、音の流れを聴きながら、視覚で確認しながら身体を動かす。

重力を感じる。
水平を保つ。
空間を認識する。
そして、必要な瞬間に身体を反射させる。

四つの基準が、再び一つの場所へ集まってきます。

さらに視覚と聴覚。

ZERO BRAIN Systemは常にチームで動いている。